[レポート]1日目: スタンフォード大学発のデザインイノベーションプロジェクトME310は「手を動かしながら、失敗しながら、前へ進む」ことを学ぶ学習環境だった[Report] ME310/SUGAR report in Stanford University


発表を聞いているとなんとなく分かったふりをして流したり、なんとなく分からないけど驚きと感動を感じたことは誰でもあるだろう。なんとなく分かったふりをしていることがほとんどだけど、なんとなく分からないけどすごい!と感じさせるものが、きっと僕たちの価値観を押し広げている。

世界の頭脳が大集結して「つくりながら、かんがえる」を実践するME310/ SUGARの発表は、なんとなく分からないことも多いけれど未来の生活を変えてくれそうなワクワクを感じた。

というわけで、スタンフォード大学で行われているME310/SUGARのレポートを2回に分けてお届けします。
2日目はこちらのレポートから。

[レポート]2日目:スタンフォード大学発のデザインイノベーションプロジェクトME310/SUGARに9ヶ月取り組んでみた結果


あこがれの西海岸は野暮ったい!?衝撃のスタート

アメリカは西海岸、サンフランシスコへやってきた。初めてアメリカ本土、さらにウェストコートを訪れる私は、「FacebookやUberなどのIT起業が立ち並び、ヒップな生活をしているおしゃれなシリコンバレー」へのあこがれを抱いていた。世界で学術的にデザイン思考をリードするスタンフォード大学もあこがれのひとつで、ドローンがキャンパス内を飛んでいたり、そこいらで学生がパーソナルビークルを乗り回しているものだと思っていたが実際は郊外で野暮ったい雰囲気で落胆しつつも、妙な親近感を感じた。


サンフランシスコ発の配車サービスであるUberを初めて利用し、ドキドキしながら学生やスシ先生がいるリハーサル会場へ。この会場は、ドイツ最大級のソフトウェア会社であり、d.school最大級のスポンサーであるSAPのオフィスの一角だった


周囲は草原?が広がっており、垣根が見える。まるで牧場の中にオフィスがあるようだが、近くまで行くと広大な駐車場がある。街を歩いている人はほとんどいない。周囲にはスマートカーをリードするテスラやVMwareグループの本社がある


SUGARのリハーサルに向けて準備中の学生たち



スタンフォード大学とのME310とそれ以外の大学連携で行うSUGARプログラム

まずはこのプロジェクトについて説明しておこう。ME310/SUGARプログラムとは、スタンフォード大学が主催する国際的な産学連携プログラムのことだ。ME310とは、Mechanical Engineering(機械工学)の名物授業で、企業が提示する課題に対して、学生が中心となってニーズ調査、アイデア創出、プロトタイピング、ユーザー評価まで取り組む実践的なプロジェクトだ。これが9ヶ月にも渡るのだから、その大きさは想像できるだろう。次第に、スタンフォード大学だけの産学連携から他大学との共同プロジェクトになり、今では、ME310の方法論に則って他大学同士が行うSUGARにまで発展している。
京都工芸繊維大学は、2009年にフィンランドのアールト大学と2年連続でME310に取り組んだ後、2015年からKYOTO Design Labスシ・スズキ特任准教授らの指導の元、ME310とSUGARに参加している。4度目の参加となる2015年度は、凸版印刷株式会社☓スタンフォード大学、ヤンマー株式会社☓スインバーン工科大学(オーストラリア)と取り組んだ。D-labとして2年目となる2016年度は、スタンフォード大学以外の3大学とSUGARに参加し、4つのプロジェクトに取り組んでいる。
2つはプログラムとして大きな違いはないものの、ME310のほうが日程的に先に発表と展示を行い、その翌日にSUGARの学生たちも別会場で発表、展示を行う。


ME310はコースの名前で、ME101では紙を使ったプロトタイピングや違うことをやっている


ME210,218はロボティクスのプロジェクトを行うそうだ



ME310の発表は”イノベーション”を育てる雰囲気にあふれている

ME310/SUGARは、午前中に行われるプレゼンテーションと午後からの展示に分かれている。TEDさながら非常にスムーズなプレゼンテーションが続き、学生たちがいかにプロジェクトの進行と準備に時間をかけていたのか窺い知れる。
他国間の大学で行うプロジェクトのため、プレゼンには国柄や文化的な違いが大いに反映されているため、なんとなく分かるクスリとくるようなクリシェが随所に散りばめられていて飽きない。
2016-2017のME310は、スタンフォード大学と①VOLVO(ドイツ)☓Blekinge Tekniska Högskola(スウェーデン)、②xylem(アメリカ)☓Aalto University(フィンランド)、③SAP(ドイツ)☓Hochschule Mannheim(ドイツ)、④Nestle(アメリカ)☓d.school Paris(フランス)、⑤ Audi(アメリカ)☓Hasso Plattner Institut(ドイツ)、⑥Ford(アメリカ)☓National Autonomous University of Mexico(メキシコ)、⑦InnoSpring(中国)☓Design Factory Melbourne(カナダ)☓南通大学(中国)、⑧Huawei(中国)☓ Hasso Plattner Institut(ドイツ)という顔ぶれだ。
全体的な印象としてIoT(Internet of Things)を前提とした提案が多く、プロダクトだけでなくアプリやウェブサービスにまで言及していたのがシリコンバレーらしい。


スタンフォード大学キャンパス内にある「ヒューレット・ティーチング・センター」は、HP創始者であるヒューレットの名前がついている。なんと、校舎のいくつかはHPによる寄付で建設されており、パッカードの名がついた校舎もあった


ヒューレットさんとパッカードさんの肖像も飾られていた


機械工学がベースとなっているため、CGを用いた具体的な設計も発表される


左はフランスの大学が日々市場で買い物をするのに対し、右のアメリカ人はコストコで大量に買い物をするというスライド。各地のあるあるネタも集合している


ほぼすべての大学がそもそも多国籍な顔ぶれ。このグループはアメリカとドイツの大学だが、半数ものアジア人が参加している


プレゼン後は会場からガンガン質問が浴びせられている。テクニカルな話から、大きな話まで、参加者は基本的に提案を好意的に捉えている印象を受けた



プロトタイピングの発表会場は本当にラフな雰囲気

日本の見本市や学外発表はきっちりかっちり作られたプロトタイプやパネル展示をされていることがほとんどだろうが、ME310はかなりラフな印象だ。それもそのはず、d.schoolは手を動かしてつくることを大切にしている。なにせ「何もしないことが失敗だ。失敗せずに成功したものは誰一人いない。ただひたすらに作れ」というジョン・ケージの言葉が、施設の中央に大きく吊り下げられているくらいだからだ。
だからこそ、展示しているもののほとんどを触ったり、実際に動かして見せてもらえる。コンセプトモデルで済ませることなく、実装するところまで重きをおいているところが特徴だ。d.schoolの思想でもある「ラフにつくり、素早く実験する」学習環境が随所に現れている。


Audiグループによる3Dプリンタを用いたプロトタイプのパーツ


ネスレのグループによるスパイスの自動配合とレシピが出る自動販売機


中国チームはドローンを用いた配送サービスができたときの配送ボックスを提案していた


アールト大学との市民向け簡易な水質調査キットのパネル


プロトタイピングがどかっと置かれている周りをたくさんの人が会場を歩き回り、話を聞くスタイルは先行開発のチャレンジ精神が理解できる


360度カメラ動画で会場の雰囲気は伝わるだろうか


手を動かしながら、失敗しながら、前へ進む精神

会場には所狭しと8チームのプロトタイプが設置されている。社会的な課題や市場的な課題などが入り乱れ、文脈的に捉えることが難しい部分も確かになる。ただ、そこで使われているアイデアやテクノロジーはちょっとだけ身近なので、なんとなく分かるようなわからないようなという絶妙な線に位置している。
これがプレゼンテーションだけだったら掴みどころが無いまま終わってしまったかもしれないが、目の前に実際に動く(動かないものもあるが)プロトタイプがあるということが重要なんだろう。
手を動かしながら、失敗しながら、前へ進む。そこでしか得られない実感を感じることができるME310の展示発表だった。

明日はSUGARの発表と展示が行われる。到着時には関税でプロトタイプが止められていたり、ギリギリまでブースが完成しなかった学生たちの奮闘に期待したい。



2日目はこちらのレポートから。

[レポート]2日目:スタンフォード大学発のデザインイノベーションプロジェクトME310/SUGARに9ヶ月取り組んでみた結果


ライター紹介: 浅野 翔
1987年生まれ。2011年、京都工芸繊維大学造形工学課程 建築コース卒業。2014年、同大学大学院デザイン経営工学専攻 環境デザイン経営コース修了。同年よりデザインリサーチャー、サービスデザイナーとして活動を始め、2017年よりKYOTO Design Labのパブリケーション・マネージャーを務める。

Coming soon…

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