上京下京3Dスキャニングプロジェクトとは

本プロジェクトは、3Dスキャニングという「方法」の可能性を探ることを目的としています。これを前提に、上京・聚楽学区の路地空間を3Dスキャニング技術を用いて調査し、記録撮影した点群データをどのように活用することができるのか、その可能性を検討し提案するプロジェクトです。
京都・上京という、高低差があり、かつて聚楽第があったという歴史的な地域に入り込み、その緊密なコミュニティと空間を有する路地という、地形的、歴史的、文化的、社会的に複雑な場所を対象に、多角的に検討することを試みました。

プロジェクトのねらいと成果
3Dスキャニングのデータをどのように分析していくか。プロジェクトを進めるにしたがい、3つのグループへと分かれて考察・検討を進めました。

  1. 土地所有とあふれ出しの観点から、それぞれの路地の特徴を見出すこと:「あふれだし」班
  2. 京都市が掲げる「修復型のまちづくり」に賛同し、防災の観点から路地の魅力の継承と安全性の両立を目指すこと:「防災」班
  3. 絵図や堀の遺構から聚楽第の姿を復元し、過去と現在の姿を重ね合わせた動画を作成・公開することで、地域の魅力を高めること:「聚楽第復元」班

この指針により得られた結果に基づき考察し、次のようないくつかの視点とその可能性が提示されたと考えています。

 ・歴史と防災の両立のための検討素材として
 ・有機的に変化する都市のアーカイブズとして
 ・地域との対話の契機として
 ・歴史と現代を結びつける素材として

これらを踏まえ、成果物としてまとめたものがプロジェクトブックと動画です。プロジェクトブックは地域住民の方々を招いて行われた成果報告会などで配布され、その際に以下の動画も公開されました。

動画の概要


『防災』
京都市内には数多くの細街路が現存します。これら路地内での生活が、それぞれの路地景観をつくり出しています。路地には自転車や植木鉢、洗濯機や手洗い場を設置して有効活用しているケースなど、様々な生活物品の「あふれだし」が存在します。
本プロジェクトでは、安全面や防災の観点から京都市が掲げる「修復型のまちづくり」に賛同し、調査地域である上京区の路地を対象に、路地における魅力の継承と安全性の両立を目指し、各路地に新たな二方向避難案の設置を提案。本動画は、3Dスキャンによって得られた正確な路地データを用いて、火災が発生した際のシミュレーション動画として作成しました。


『聚楽第復元』
豊臣秀吉の政庁兼邸宅として、秀吉が関白となった翌年の天正14年(1586)に造営がはじまり(翌年建立)、文禄4年(1596)に破城する、わずか9年のみ存在した聚楽第。昭和4年(1929)に現在の上京区聚楽学区と改称したこの地に、現在その城跡は存在していません。

ここでは「聚楽第図屏風」(三井記念美術館蔵)などの絵図や堀の遺構を頼りに3Dモデルによる復元を行い、実測した現代の街並の点群データと重ね合わせた動画を作成することで、過去と現在とを同時に可視化し、都市に眠る聚楽第の記憶を呼び起こすことを目指しました。
鏡石町から栄町につながる階段など聚楽第の遺構を感じられる場所を組み込み、堀部分に位置する現代の建物の点群データを合成することで、シームレスな時代の変化を表現しています。

参考文献:

『防災』

  • 京都市情報館「歴史都市京都における密集市街地等の取組方針」(平成24年7月策定、令和3年3月改定)  
    https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/cmsfiles/contents/0000185/185042/torikumihousinkaitei.pdf(2022年2月1日最終閲覧)
  • 京都市情報館「京都市細街路対策指針」(平成24年7月策定)  
    https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/cmsfiles/contents/0000185/185042/shishin.pdf(2022年2月1日最終閲覧)
  • 気象庁 京都府の気象特性  
    https://www.jma-net.go.jp/kyoto/3_know/kishoutokusei/index.html(2022年2月1日最終閲覧)
  • 京都市消防局 火災統計  
    https://www.city.kyoto.lg.jp/shobo/page/0000275831.html(2022年2月1日最終閲覧)
  • 京都市防災ポータルサイト「京都市第3次地震被害想定報告書」(平成15年10月策定)
    https://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/page/0000015600.html(2022年2月1日最終閲覧)
  • 政府地震調査研究推進本部「京都府の地震活動の特徴」
    https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_kinki/p26_kyoto/(2022年2月1日最終閲覧)
  • 京都市情報館「大地震が京都を!~災害に強い安心・安全のまち、京都をめざして~」
    https://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/page/0000077709.html(2022年2月1日最終閲覧)
  • 「入居者等の避難に要する時間の算定方法等を定める件」(消防庁告示、平成26年3月28日)
    https://www.fdma.go.jp/laws/kokuji/assets/h26_kokuji4.pdf(2022年2月1日最終閲覧)
  • 『聚楽第復元』

  • 日本史研究会『豊臣秀吉と京都―聚楽第・御土居と伏見城―』(図書出版文理閣、2001)
  • 田中緑紅『聚楽城 西陣を語る第三話』(緑紅業書、1960)
  • 丸山俊明『京都のまちなみは、こうして生まれた―都城・町家・木戸門・火消衆―』(びわこ学院大学出版専門委員会、2020)
  • 丸山俊明『京都の町家と聚楽第 太閤様、御成の筋につき』(昭和堂、2014)
  • 村井康彦『京の歴史と文化4 戦国・安土桃山時代 絢 天下人の登場』(講談社、1994)
  • e国宝―洛中洛外図(舟木本)
    https://emuseum.nich.go.jp/detail?content_base_id=100318&content_part_
    id=001&content_pict_id=044&langId=ja&webView=null(2021年12月12日閲覧)
  • 公益財団法人京都市埋蔵文化財研究所・京都市考古資料館「聚楽第跡―天下人の象徴―」(リーフレット京都No.213、2006)
  • 公益財団法人京都府埋蔵文化財調査研究センター「平安宮跡・聚楽第跡」(京都府遺跡調査報告書、第156冊、2013)
  • 内藤昌、大野耕嗣、中村利則「聚楽第―武家地の建築(近世都市図屏風の建築的研究―洛中洛外図・その2―)」(日本建築学会論文報告集第180号 昭和46年2月)
  • 狩野博幸『秀吉の御所参内・聚楽第行幸図屏風』(青幻舎、2010)
    「御所参内・聚楽第行幸図」(図2-1、2-4、2-5、2-6、2-8)、「聚楽第図屏風」(図2-2、2-7、2-9、2-13)
  • 丸山俊明「豊臣政権期の京都の町家―『御所参内・聚楽第行幸図』屏風にみる行幸沿道の町並み景観―」(日本建築学会計画系論文集第75巻、第651号、2010)
  • 百瀬正恒「聚楽第の築城と都市の発展」『豊臣秀吉と京都 聚楽第・御土居と伏見城』(日本史研究会編、2001)
  • 加藤悠希「聚楽第・伏見城・豊国廟遺構説の萌芽」(日本建築学会計画系論文集、第77巻、第675号、2012)
  • 桜井成広「豊臣秀吉の居城」(日本城郭資料館出版会, 1970-1971)
  • 三浦正幸監修『復元CG日本の城』(山川出版社、2019)
  • 古川匠ほか「中近世城郭研究における表面波探査法の活用:京都府聚楽第跡を対象に」(日本考古学、2018)
  • 釜井俊孝『埋もれた都の防災学:都市と地盤災害の2000年』(京都大学学術出版会、2016)
  • 堺市博物館データベース「聚楽第行幸図屏風」
    https://www.city.sakai.lg.jp/kanko/hakubutsukan/collection/kanzouhin.html(2022年2月21日閲覧)図2-3
  • 松尾法博「デジタルコンテンツを利用した特別史跡名護屋城の活用―肥前名護屋城復元CGの制作とその活用―」(遺跡整備・活用研究集会報告書、2016)図2-11
  • 広島市デジタルギャラリー「広島城」
    https://www.city.hiroshima.lg.jp/soshiki/5/173589.html(2022年2月21日閲覧)図2-12

上京下京3Dスキャニングプロジェクトとは

本プロジェクトは、3Dスキャニングという「方法」の可能性を探ることを目的としています。これを前提に、上京・聚楽学区の路地空間を3Dスキャニング技術を用いて調査し、記録撮影した点群データをどのように活用することができるのか、その可能性を検討し提案するプロジェクトです。
京都・上京という、高低差があり、かつて聚楽第があったという歴史的な地域に入り込み、その緊密なコミュニティと空間を有する路地という、地形的、歴史的、文化的、社会的に複雑な場所を対象に、多角的に検討することを試みました。

プロジェクトのねらいと成果
3Dスキャニングのデータをどのように分析していくか。プロジェクトを進めるにしたがい、3つのグループへと分かれて考察・検討を進めました。

  1. 土地所有とあふれ出しの観点から、それぞれの路地の特徴を見出すこと:「あふれだし」班
  2. 京都市が掲げる「修復型のまちづくり」に賛同し、防災の観点から路地の魅力の継承と安全性の両立を目指すこと:「防災」班
  3. 絵図や堀の遺構から聚楽第の姿を復元し、過去と現在の姿を重ね合わせた動画を作成・公開することで、地域の魅力を高めること:「聚楽第復元」班

この指針により得られた結果に基づき考察し、次のようないくつかの視点とその可能性が提示されたと考えています。

 ・歴史と防災の両立のための検討素材として
 ・有機的に変化する都市のアーカイブズとして
 ・地域との対話の契機として
 ・歴史と現代を結びつける素材として

これらを踏まえ、成果物としてまとめたものがプロジェクトブックと動画です。プロジェクトブックは地域住民の方々を招いて行われた成果報告会などで配布され、その際に以下の動画も公開されました。

動画の概要


『防災』
京都市内には数多くの細街路が現存します。これら路地内での生活が、それぞれの路地景観をつくり出しています。路地には自転車や植木鉢、洗濯機や手洗い場を設置して有効活用しているケースなど、様々な生活物品の「あふれだし」が存在します。
本プロジェクトでは、安全面や防災の観点から京都市が掲げる「修復型のまちづくり」に賛同し、調査地域である上京区の路地を対象に、路地における魅力の継承と安全性の両立を目指し、各路地に新たな二方向避難案の設置を提案。本動画は、3Dスキャンによって得られた正確な路地データを用いて、火災が発生した際のシミュレーション動画として作成しました。


『聚楽第復元』
豊臣秀吉の政庁兼邸宅として、秀吉が関白となった翌年の天正14年(1586)に造営がはじまり(翌年建立)、文禄4年(1596)に破城する、わずか9年のみ存在した聚楽第。昭和4年(1929)に現在の上京区聚楽学区と改称したこの地に、現在その城跡は存在していません。

ここでは「聚楽第図屏風」(三井記念美術館蔵)などの絵図や堀の遺構を頼りに3Dモデルによる復元を行い、実測した現代の街並の点群データと重ね合わせた動画を作成することで、過去と現在とを同時に可視化し、都市に眠る聚楽第の記憶を呼び起こすことを目指しました。
鏡石町から栄町につながる階段など聚楽第の遺構を感じられる場所を組み込み、堀部分に位置する現代の建物の点群データを合成することで、シームレスな時代の変化を表現しています。

参考文献:

『防災』

  • 京都市情報館「歴史都市京都における密集市街地等の取組方針」(平成24年7月策定、令和3年3月改定)  
    https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/cmsfiles/contents/0000185/185042/torikumihousinkaitei.pdf(2022年2月1日最終閲覧)
  • 京都市情報館「京都市細街路対策指針」(平成24年7月策定)  
    https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/cmsfiles/contents/0000185/185042/shishin.pdf(2022年2月1日最終閲覧)
  • 気象庁 京都府の気象特性  
    https://www.jma-net.go.jp/kyoto/3_know/kishoutokusei/index.html(2022年2月1日最終閲覧)
  • 京都市消防局 火災統計  
    https://www.city.kyoto.lg.jp/shobo/page/0000275831.html(2022年2月1日最終閲覧)
  • 京都市防災ポータルサイト「京都市第3次地震被害想定報告書」(平成15年10月策定)
    https://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/page/0000015600.html(2022年2月1日最終閲覧)
  • 政府地震調査研究推進本部「京都府の地震活動の特徴」
    https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_kinki/p26_kyoto/(2022年2月1日最終閲覧)
  • 京都市情報館「大地震が京都を!~災害に強い安心・安全のまち、京都をめざして~」
    https://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/page/0000077709.html(2022年2月1日最終閲覧)
  • 「入居者等の避難に要する時間の算定方法等を定める件」(消防庁告示、平成26年3月28日)
    https://www.fdma.go.jp/laws/kokuji/assets/h26_kokuji4.pdf(2022年2月1日最終閲覧)
  • 『聚楽第復元』

  • 日本史研究会『豊臣秀吉と京都―聚楽第・御土居と伏見城―』(図書出版文理閣、2001)
  • 田中緑紅『聚楽城 西陣を語る第三話』(緑紅業書、1960)
  • 丸山俊明『京都のまちなみは、こうして生まれた―都城・町家・木戸門・火消衆―』(びわこ学院大学出版専門委員会、2020)
  • 丸山俊明『京都の町家と聚楽第 太閤様、御成の筋につき』(昭和堂、2014)
  • 村井康彦『京の歴史と文化4 戦国・安土桃山時代 絢 天下人の登場』(講談社、1994)
  • e国宝―洛中洛外図(舟木本)
    https://emuseum.nich.go.jp/detail?content_base_id=100318&content_part_
    id=001&content_pict_id=044&langId=ja&webView=null(2021年12月12日閲覧)
  • 公益財団法人京都市埋蔵文化財研究所・京都市考古資料館「聚楽第跡―天下人の象徴―」(リーフレット京都No.213、2006)
  • 公益財団法人京都府埋蔵文化財調査研究センター「平安宮跡・聚楽第跡」(京都府遺跡調査報告書、第156冊、2013)
  • 内藤昌、大野耕嗣、中村利則「聚楽第―武家地の建築(近世都市図屏風の建築的研究―洛中洛外図・その2―)」(日本建築学会論文報告集第180号 昭和46年2月)
  • 狩野博幸『秀吉の御所参内・聚楽第行幸図屏風』(青幻舎、2010)
    「御所参内・聚楽第行幸図」(図2-1、2-4、2-5、2-6、2-8)、「聚楽第図屏風」(図2-2、2-7、2-9、2-13)
  • 丸山俊明「豊臣政権期の京都の町家―『御所参内・聚楽第行幸図』屏風にみる行幸沿道の町並み景観―」(日本建築学会計画系論文集第75巻、第651号、2010)
  • 百瀬正恒「聚楽第の築城と都市の発展」『豊臣秀吉と京都 聚楽第・御土居と伏見城』(日本史研究会編、2001)
  • 加藤悠希「聚楽第・伏見城・豊国廟遺構説の萌芽」(日本建築学会計画系論文集、第77巻、第675号、2012)
  • 桜井成広「豊臣秀吉の居城」(日本城郭資料館出版会, 1970-1971)
  • 三浦正幸監修『復元CG日本の城』(山川出版社、2019)
  • 古川匠ほか「中近世城郭研究における表面波探査法の活用:京都府聚楽第跡を対象に」(日本考古学、2018)
  • 釜井俊孝『埋もれた都の防災学:都市と地盤災害の2000年』(京都大学学術出版会、2016)
  • 堺市博物館データベース「聚楽第行幸図屏風」
    https://www.city.sakai.lg.jp/kanko/hakubutsukan/collection/kanzouhin.html(2022年2月21日閲覧)図2-3
  • 松尾法博「デジタルコンテンツを利用した特別史跡名護屋城の活用―肥前名護屋城復元CGの制作とその活用―」(遺跡整備・活用研究集会報告書、2016)図2-11
  • 広島市デジタルギャラリー「広島城」
    https://www.city.hiroshima.lg.jp/soshiki/5/173589.html(2022年2月21日閲覧)図2-12