国際的に知られる著名な大学や研究機関などとの合同プロジェクトやワークショップを実施する中で、KYOTO Design Labはいくつもの交換留学の提携を結んできました。

昨年から始まった留学レポートシリーズでは、D-labのプロジェクトを通じて新たに提携を結んだ「イギリス・キングストン大学」と「スイス・ルツェルン応用科学芸術大学」と「イタリア・トリノ工科大学」に交換留学中の近藤弘規さんと小林柚子さんと荒木菜見子さんに加え、「アメリカ・スタンフォード大学」で滞在研究を行う篠原由美子さんに寄稿してもらっています。

小林さんからの第2回の留学レポートでは、ルツェルン応用科学芸術大学の設計演習課題やスイスと日本の学生の違いが読み取れます。

留学を検討中の皆さんはぜひ購読し、参考にしてください。

第1回のレポート記事はこちらから≫
[留学レポート]これこれしかじかスイス建築留学物語 vol.1 – 小林柚子 – KYOTO Design Lab

こんにちは。2017年9月から1年間、スイスのルツェルン応答科学芸術大学Lucerne University of Applied Science and Architecture(以下、ルツェルン大学)に交換留学しています、小林柚子(こばやしゆずこ)です。

今回のレポートでは、ルツェルン大学での課題・授業の様子やそれを通して発見したこと・感じたことについて書いていきたいと思います。

課題・授業について

修士課程では、5ヶ月間の1セメスター(秋学期)に最大で4つの座学、修学旅行のようなStudy Trip、設計実習(以下、プロジェクト)を履修できます。

プロジェクトは主に3つの種類に分かれています。

・効率的にエネルギーを得る空間とサスティナビリティについて学ぶEnergy Project
・敷地のタイポロジーに沿ってより詳細な部分まで設計を学ぶMaterial Project
・シティプランニングから建物のディテールまで総括的な設計を学ぶStructure Project

私は特殊な環境の中でも意匠性と機能性を両方兼ね備えたスイスの設計について学びたいと思ったので、Energy Projectを選択しました。

海抜1,700mに位置し、1年のうち260日もの間、気温が氷点下まで下がるほど厳しい気候にあるサメダン(Samedan)という地域がスイス東部にあります。

設計課題は、サメダンにある全寮制の学校、Academia Engiadina(アカデミア・エンガディン)のキャンパス敷地内に、講堂、教室、学生寮、体育館などの中から機能を選び、設計を施すというものです。

非常に厳しい気候の中で、いかに寒さから建物を守り、快適な空間を保ち、さらに効率的にエネルギーを利用するかを考えて設計することが求められます。

どのプロジェクトを選択してもエスキスは必ず週1回行われ、クオリティとそれなりの修正が毎回求められます。

そんな中でも驚いたことの1つがプレゼンの多さです。

エスキスでも2回に1回はプレゼン形式をとり、座学の授業でもプレゼンをする機会は多くありました。

正規の学生に比べて少ない授業数の私でさえ、1セメスターの間に10回ほどプレゼンをしました。

そのような環境が当たり前なので、日本の学生とは比にならないくらいスイスの学生のプレゼン力は高いです。

MidtermReviewでプレゼンテーションをする様子。アカデミア・エンガディンから講師を、スイスの建築事務所から複数の建築家をゲストにむかえ、クリティックを行いました

学生の建築へのアプローチ

プロジェクトを進めていく中で、日本の学生とルツェルンの学生との相違点を感じることが多々ありました。

まず、設計へのアプローチ方法ですが、スイスの学生は敷地周辺のアーバニズムやタイポロジーを読み取ってプランニングし、建物のマテリアルやファサードにこだわりを持ちます。

日本の学生がコンセプトやストーリーを大切にし、敷地に新しく魅力のある空間を提案するのに対して、スイスの学生の設計は全体的に保守的になりがちですが、ディテールの知識がとても深い提案が多いと感じました。

そして、模型に関してですが、スイスの学生は日本の学生の間では定番の紙や、ダンボール、バルサなど、カッターを使って切る材料をめったに使いません。

プラスターや木材などの材料を、レーザープリンターなどのデジタル加工機や工具・工作機械を利用して硬くてずっしり重い模型を作っています。

この模型に利用する素材の違いが、設計のマテリアルやファサードへのこだわりに通じているのではないかと思います。

インテリアデザイン学専攻の学生の模型の様子


クリティック直前の製図室の様子。模型が所狭しと並んでいます

製図室の様子

製図室は工繊大と同じく、24時間、ほぼ年中無休で開かれており、ここで日本人と同じスイス人の勤勉さが感じられます(笑)。

ワンフロアをパーテーション無しの大きな製図室とし、そこに配置された大きめの机を4人ほどでシェアするスタイルをとっています。

一つの製図室に学部生から院生までの全建築学専攻の学生が集います。

製図室全体を覆う大きな窓からはスイスらしい、山々と湖を望められ、日や時間によって変化する美しい景色を楽しみながら作業することができます。

模型を作るための工具や機械が備えられた工房は製図室のすぐ下の階に位置しており、自由に利用することができます。

木工工房の様子。基本的に模型制作をする時は皆ここで作業をします

まとめ

スイスに到着して約半年が経ち、初めてのことだらけだった秋学期も無事に終わりを迎えました。

建築に対するアプローチ方法は各国の文化や環境によって大きく異なっていましたが、日本のストーリーを大切にする姿勢をもちながら、ディテールやファサードにこだわるスイスの学生の建築への姿勢も吸収して、より成長していきたいと思います。


ライター紹介:小林柚子
1995年生まれ。京都工芸繊維大学大学院 建築学専攻 米田研究室所属 博士前期課程1年生。2017年9月よりスイス・ルツェルン応用科学芸術大学に交換留学中。


今回のレポートまとめ

1. 設計演習は3つのプロジェクト〈Energy, Material, Structure〉から選択!
2. プレゼンテーションの機会がたくさん!
3. スイスの学生はアーバニズムやタイポロジーからプランニング!マテリアルやデティールにも造詣が深い!

留学の相談は、京都工芸繊維大学の国際課へご連絡下さい。


次回のレポート「これこれしかじかスイス建築留学物語語 vol.4」の公開は、3月上旬を予定しています。こうご期待!


隔週月曜日発行のメールマガジン、D-labの活動をまとめてお届けします。


国際的に知られる著名な大学や研究機関などとの合同プロジェクトやワークショップを実施する中で、KYOTO Design Labはいくつもの交換留学の提携を結んできました。

昨年から始まった留学レポートシリーズでは、D-labのプロジェクトを通じて新たに提携を結んだ「イギリス・キングストン大学」と「スイス・ルツェルン応用科学芸術大学」と「イタリア・トリノ工科大学」に交換留学中の近藤弘規さんと小林柚子さんと荒木菜見子さんに加え、「アメリカ・スタンフォード大学」で滞在研究を行う篠原由美子さんに寄稿してもらっています。

小林さんからの第2回の留学レポートでは、ルツェルン応用科学芸術大学の設計演習課題やスイスと日本の学生の違いが読み取れます。

留学を検討中の皆さんはぜひ購読し、参考にしてください。

第1回のレポート記事はこちらから≫
[留学レポート]これこれしかじかスイス建築留学物語 vol.1 – 小林柚子 – KYOTO Design Lab

こんにちは。2017年9月から1年間、スイスのルツェルン応答科学芸術大学Lucerne University of Applied Science and Architecture(以下、ルツェルン大学)に交換留学しています、小林柚子(こばやしゆずこ)です。

今回のレポートでは、ルツェルン大学での課題・授業の様子やそれを通して発見したこと・感じたことについて書いていきたいと思います。

課題・授業について

修士課程では、5ヶ月間の1セメスター(秋学期)に最大で4つの座学、修学旅行のようなStudy Trip、設計実習(以下、プロジェクト)を履修できます。

プロジェクトは主に3つの種類に分かれています。

・効率的にエネルギーを得る空間とサスティナビリティについて学ぶEnergy Project
・敷地のタイポロジーに沿ってより詳細な部分まで設計を学ぶMaterial Project
・シティプランニングから建物のディテールまで総括的な設計を学ぶStructure Project

私は特殊な環境の中でも意匠性と機能性を両方兼ね備えたスイスの設計について学びたいと思ったので、Energy Projectを選択しました。

海抜1,700mに位置し、1年のうち260日もの間、気温が氷点下まで下がるほど厳しい気候にあるサメダン(Samedan)という地域がスイス東部にあります。

設計課題は、サメダンにある全寮制の学校、Academia Engiadina(アカデミア・エンガディン)のキャンパス敷地内に、講堂、教室、学生寮、体育館などの中から機能を選び、設計を施すというものです。

非常に厳しい気候の中で、いかに寒さから建物を守り、快適な空間を保ち、さらに効率的にエネルギーを利用するかを考えて設計することが求められます。

どのプロジェクトを選択してもエスキスは必ず週1回行われ、クオリティとそれなりの修正が毎回求められます。

そんな中でも驚いたことの1つがプレゼンの多さです。

エスキスでも2回に1回はプレゼン形式をとり、座学の授業でもプレゼンをする機会は多くありました。

正規の学生に比べて少ない授業数の私でさえ、1セメスターの間に10回ほどプレゼンをしました。

そのような環境が当たり前なので、日本の学生とは比にならないくらいスイスの学生のプレゼン力は高いです。

MidtermReviewでプレゼンテーションをする様子。アカデミア・エンガディンから講師を、スイスの建築事務所から複数の建築家をゲストにむかえ、クリティックを行いました

学生の建築へのアプローチ

プロジェクトを進めていく中で、日本の学生とルツェルンの学生との相違点を感じることが多々ありました。

まず、設計へのアプローチ方法ですが、スイスの学生は敷地周辺のアーバニズムやタイポロジーを読み取ってプランニングし、建物のマテリアルやファサードにこだわりを持ちます。

日本の学生がコンセプトやストーリーを大切にし、敷地に新しく魅力のある空間を提案するのに対して、スイスの学生の設計は全体的に保守的になりがちですが、ディテールの知識がとても深い提案が多いと感じました。

そして、模型に関してですが、スイスの学生は日本の学生の間では定番の紙や、ダンボール、バルサなど、カッターを使って切る材料をめったに使いません。

プラスターや木材などの材料を、レーザープリンターなどのデジタル加工機や工具・工作機械を利用して硬くてずっしり重い模型を作っています。

この模型に利用する素材の違いが、設計のマテリアルやファサードへのこだわりに通じているのではないかと思います。

インテリアデザイン学専攻の学生の模型の様子


クリティック直前の製図室の様子。模型が所狭しと並んでいます

製図室の様子

製図室は工繊大と同じく、24時間、ほぼ年中無休で開かれており、ここで日本人と同じスイス人の勤勉さが感じられます(笑)。

ワンフロアをパーテーション無しの大きな製図室とし、そこに配置された大きめの机を4人ほどでシェアするスタイルをとっています。

一つの製図室に学部生から院生までの全建築学専攻の学生が集います。

製図室全体を覆う大きな窓からはスイスらしい、山々と湖を望められ、日や時間によって変化する美しい景色を楽しみながら作業することができます。

模型を作るための工具や機械が備えられた工房は製図室のすぐ下の階に位置しており、自由に利用することができます。

木工工房の様子。基本的に模型制作をする時は皆ここで作業をします

まとめ

スイスに到着して約半年が経ち、初めてのことだらけだった秋学期も無事に終わりを迎えました。

建築に対するアプローチ方法は各国の文化や環境によって大きく異なっていましたが、日本のストーリーを大切にする姿勢をもちながら、ディテールやファサードにこだわるスイスの学生の建築への姿勢も吸収して、より成長していきたいと思います。


ライター紹介:小林柚子
1995年生まれ。京都工芸繊維大学大学院 建築学専攻 米田研究室所属 博士前期課程1年生。2017年9月よりスイス・ルツェルン応用科学芸術大学に交換留学中。


今回のレポートまとめ

1. 設計演習は3つのプロジェクト〈Energy, Material, Structure〉から選択!
2. プレゼンテーションの機会がたくさん!
3. スイスの学生はアーバニズムやタイポロジーからプランニング!マテリアルやデティールにも造詣が深い!

留学の相談は、京都工芸繊維大学の国際課へご連絡下さい。


次回のレポート「これこれしかじかスイス建築留学物語語 vol.4」の公開は、3月上旬を予定しています。こうご期待!


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