1970年代前後に建設され、古民家のような価値化もまだされていない空き家改修の為、既存建物の精緻なデータ取得と、部材制作でのデータ活用にKYOTO Design Labが全面的に技術協力を行った。

瀬戸内国際芸術祭2022の出展作品として公開されている小豆島ハウスは、古民家のようなノスタルジックな価値をまだ持ち得ていない高度成長期に建てられた住宅であり、国内でも増加し続けているいわゆる空き家だった建物。新建築社は、その利活用可能性を検証する実験場として『小豆島ハウスプロジェクト』を開始。そこで建物に付帯する記憶や、建物の材料的・意匠的な資源性を抽出するツールとして3Dスキャニングをはじめとしたデジタル技術に着眼、KYOTO Design Lab[D-lab]と新建築社で共同研究を締結し、協働に至った。

KYOTO Design Labとしては、小豆島ハウスへの改修前、構造体まで解体した時点での母屋・離れ・蔵の三棟を含む敷地全体、及び同敷地が位置する坂手エリアの玄関口である坂手港までの徒歩10分ほどの周辺界隈の3Dスキャニングを実施。さらに、補修の必要があった柱梁のシロアリダメージ部分の形状把握には、ハンドスキャナーによる高精細な3Dスキャニングを実施した。全体スキャンデータは映像展示及び改修後の意匠材の仕上げ加工に、精細な部分スキャンデータはシロアリダメージ部分の金継ぎ的な埋め戻し補修に用いられ、そのデジタルファブリケーションまでをD-labで担当した。

小豆島ハウス及び周辺界隈を3Dスキャンした点群データから制作した映像展示「点群のマテリアリティーについてのスケッチ」© 2022 京都工芸繊維大学、株式会社新建築社、渡邉朋也/時里充 (YCAM) 監修: 木内俊克 協力: KYOTO Design Lab

シロアリのダメージ部分をハンドスキャナーで3Dスキャン。得られたデータをネガポジ反転し、3軸のNC切削機用に成形した上、補充部材を削り出している。ダメージの履歴を消さずにデザイン化する金継ぎ的な補修。 左上: ハンドスキャナーによるスキャニング、右下: 完成後の補修部分 © 2022 木内俊克、右上: ネガポジ反転して杉角材からNC切削した補充部材、左下: 補充部材をはめ戻す作業 © 2022 砂木

小豆島ハウス・母屋内の吹き抜け空間の1階内観。向かって左手の仕上げパネルの縦帯上の模様が、同建物2階和室の床柱の凹凸模様を3Dスキャンした形状を、NC切削により転写した仕上げ材。© 2022 木内俊克

瀬戸内国際芸術祭:
「島のおじいさんおばあさんの笑顔を見たい」──そのためには、人が訪れる“観光”が島の人々の“感幸“でなければならず、この芸術祭が島の将来の展望につながって欲しい。このことが、当初から掲げてきた目的=『海の復権』です。

(瀬戸内国際芸術祭2022公式HPより)
公式HPにも記載されているとおり、地域の振興を目標に掲げた、国際的に著名な現代美術の国際芸術祭。瀬戸内海に浮かぶ島々を舞台に、春、夏、秋の三会期にわたり一年をとおして断続的に開催され、地域の風景の中で展示されたアート作品にふれることができる。

小豆島ハウス:
企  画|新建築社+砂木
設  計|砂木(木内俊克、砂山太一、大須賀嵩幸)
構造設計|ハフニアムアーキテクツ
設備設計|テーテンス事務所
施  工|植松工務店
協  力|1階梁補修/補修形状3Dスキャンデータ提供元:京都工芸繊維大学
     3Dスキャン・NC加工協力:KYOTO Design Lab 
     黒塗りベニヤ板/床柱装飾形状3Dスキャンデータ提供元:京都工芸繊維大学
     3Dスキャン・レーザーカット・NC加工協力:KYOTO Design Lab

株式会社砂木:
京都工芸繊維大学 未来デザイン・工学機構の特任准教授であり、本共同研究の担当でもある木内俊克が、砂山太一と共同代表を務める一級建築士事務所。昭和期の住宅を扱い、解体・移動・再構築がテーマであった第 17 回ヴェネツィアビエンナーレ国際建築展日本館展示『ふるまいの連鎖ーエレメントの軌跡』(キュレーション:門脇耕三)に出展作家として参加。建築・空間デザインを中心としながらも現代美術やパフォーミングアーツなど芸術領域全般において、デジタル技術を活用した実験・リサーチから設計・企画まで、多様な関わり方でプロジェクトを数多く手掛けている。

木内俊克特任准教授コメント
プロジェクトが位置する坂手は、小豆島の中でもひときわ魅力的な、自然と集落の距離が近い、文化的な景観が今も豊かに育まれている地域です。D-Labでスキャンした集落を含む点群データを元にした映像作品は、そんな坂手の環境音の録音とスキャンデータだからこそ得られた、繊細で情感豊かな情報空間の表現に成功しています。ぜひ皆さんの足で坂手に訪れ、その先に辿り着く小豆島ハウスのギャラリーで、情報空間の中に立ち上がるもう一つの坂手を感じてもらえればうれしいです。またかつての建物の部分と、デジタルにスキャン・加工された部分の新旧が融合したデザインも他にない表情をつくり出しています。ぜひその空間を体感してみて下さい。

木内俊克プロフィール
京都工芸繊維大学 未来デザイン・工学機構 特任准教授。株式会社砂木共同代表。
東京大学建築学専攻修了後、Diller Scofidio+Renfro(2005–2007,New York) 、R&Sie(n) (2007–2011,Paris)勤務。帰国後は東京大学建築学専攻 (2011-2020) 他で、コンピュテーショナルデザイン、社会実験による都市データ解析研究に従事する一方、インスタレーション・舞台美術・建築から公共空間にわたる領域横断的なデザインの実践に携わる。代表作に都市の残余空間をパブリックスペース化した『オブジェクトディスコ』(2016)、材料や意匠の資源循環を試みた『小豆島ハウス』(2022)。第 17 回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示参加。主な編書に『建築情報学へ』(編集、millegraph)

イベント概要

瀬戸内国際芸術祭2022 新建築社+砂木 小豆島ハウスプロジェクト

アクセス|〒761-4425 香川県小豆郡小豆島町坂手甲1017
     Google Map

開館スケジュール
開館時間|10:00 – 17:00 (火曜日閉館・8/16を除く)
秋会期|9/29 – 11/6(※ 春夏会期は既に終了)

詳細は、新建築+砂木 小豆島ハウスプロジェクト、および瀬戸内芸術祭2022公式HPにてご確認ください。また小豆島ハウスの建築作品情報は、新建築データ掲載記事からもご覧いただけます。

1970年代前後に建設され、古民家のような価値化もまだされていない空き家改修の為、既存建物の精緻なデータ取得と、部材制作でのデータ活用にKYOTO Design Labが全面的に技術協力を行った。

瀬戸内国際芸術祭2022の出展作品として公開されている小豆島ハウスは、古民家のようなノスタルジックな価値をまだ持ち得ていない高度成長期に建てられた住宅であり、国内でも増加し続けているいわゆる空き家だった建物。新建築社は、その利活用可能性を検証する実験場として『小豆島ハウスプロジェクト』を開始。そこで建物に付帯する記憶や、建物の材料的・意匠的な資源性を抽出するツールとして3Dスキャニングをはじめとしたデジタル技術に着眼、KYOTO Design Lab[D-lab]と新建築社で共同研究を締結し、協働に至った。

KYOTO Design Labとしては、小豆島ハウスへの改修前、構造体まで解体した時点での母屋・離れ・蔵の三棟を含む敷地全体、及び同敷地が位置する坂手エリアの玄関口である坂手港までの徒歩10分ほどの周辺界隈の3Dスキャニングを実施。さらに、補修の必要があった柱梁のシロアリダメージ部分の形状把握には、ハンドスキャナーによる高精細な3Dスキャニングを実施した。全体スキャンデータは映像展示及び改修後の意匠材の仕上げ加工に、精細な部分スキャンデータはシロアリダメージ部分の金継ぎ的な埋め戻し補修に用いられ、そのデジタルファブリケーションまでをD-labで担当した。

小豆島ハウス及び周辺界隈を3Dスキャンした点群データから制作した映像展示「点群のマテリアリティーについてのスケッチ」© 2022 京都工芸繊維大学、株式会社新建築社、渡邉朋也/時里充 (YCAM) 監修: 木内俊克 協力: KYOTO Design Lab

シロアリのダメージ部分をハンドスキャナーで3Dスキャン。得られたデータをネガポジ反転し、3軸のNC切削機用に成形した上、補充部材を削り出している。ダメージの履歴を消さずにデザイン化する金継ぎ的な補修。 左上: ハンドスキャナーによるスキャニング、右下: 完成後の補修部分 © 2022 木内俊克、右上: ネガポジ反転して杉角材からNC切削した補充部材、左下: 補充部材をはめ戻す作業 © 2022 砂木

小豆島ハウス・母屋内の吹き抜け空間の1階内観。向かって左手の仕上げパネルの縦帯上の模様が、同建物2階和室の床柱の凹凸模様を3Dスキャンした形状を、NC切削により転写した仕上げ材。© 2022 木内俊克

瀬戸内国際芸術祭:
「島のおじいさんおばあさんの笑顔を見たい」──そのためには、人が訪れる“観光”が島の人々の“感幸“でなければならず、この芸術祭が島の将来の展望につながって欲しい。このことが、当初から掲げてきた目的=『海の復権』です。

(瀬戸内国際芸術祭2022公式HPより)
公式HPにも記載されているとおり、地域の振興を目標に掲げた、国際的に著名な現代美術の国際芸術祭。瀬戸内海に浮かぶ島々を舞台に、春、夏、秋の三会期にわたり一年をとおして断続的に開催され、地域の風景の中で展示されたアート作品にふれることができる。

小豆島ハウス:
企  画|新建築社+砂木
設  計|砂木(木内俊克、砂山太一、大須賀嵩幸)
構造設計|ハフニアムアーキテクツ
設備設計|テーテンス事務所
施  工|植松工務店
協  力|1階梁補修/補修形状3Dスキャンデータ提供元:京都工芸繊維大学
     3Dスキャン・NC加工協力:KYOTO Design Lab 
     黒塗りベニヤ板/床柱装飾形状3Dスキャンデータ提供元:京都工芸繊維大学
     3Dスキャン・レーザーカット・NC加工協力:KYOTO Design Lab

株式会社砂木:
京都工芸繊維大学 未来デザイン・工学機構の特任准教授であり、本共同研究の担当でもある木内俊克が、砂山太一と共同代表を務める一級建築士事務所。昭和期の住宅を扱い、解体・移動・再構築がテーマであった第 17 回ヴェネツィアビエンナーレ国際建築展日本館展示『ふるまいの連鎖ーエレメントの軌跡』(キュレーション:門脇耕三)に出展作家として参加。建築・空間デザインを中心としながらも現代美術やパフォーミングアーツなど芸術領域全般において、デジタル技術を活用した実験・リサーチから設計・企画まで、多様な関わり方でプロジェクトを数多く手掛けている。

木内俊克特任准教授コメント
プロジェクトが位置する坂手は、小豆島の中でもひときわ魅力的な、自然と集落の距離が近い、文化的な景観が今も豊かに育まれている地域です。D-Labでスキャンした集落を含む点群データを元にした映像作品は、そんな坂手の環境音の録音とスキャンデータだからこそ得られた、繊細で情感豊かな情報空間の表現に成功しています。ぜひ皆さんの足で坂手に訪れ、その先に辿り着く小豆島ハウスのギャラリーで、情報空間の中に立ち上がるもう一つの坂手を感じてもらえればうれしいです。またかつての建物の部分と、デジタルにスキャン・加工された部分の新旧が融合したデザインも他にない表情をつくり出しています。ぜひその空間を体感してみて下さい。

木内俊克プロフィール
京都工芸繊維大学 未来デザイン・工学機構 特任准教授。株式会社砂木共同代表。
東京大学建築学専攻修了後、Diller Scofidio+Renfro(2005–2007,New York) 、R&Sie(n) (2007–2011,Paris)勤務。帰国後は東京大学建築学専攻 (2011-2020) 他で、コンピュテーショナルデザイン、社会実験による都市データ解析研究に従事する一方、インスタレーション・舞台美術・建築から公共空間にわたる領域横断的なデザインの実践に携わる。代表作に都市の残余空間をパブリックスペース化した『オブジェクトディスコ』(2016)、材料や意匠の資源循環を試みた『小豆島ハウス』(2022)。第 17 回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示参加。主な編書に『建築情報学へ』(編集、millegraph)

イベント概要

瀬戸内国際芸術祭2022 新建築社+砂木 小豆島ハウスプロジェクト

アクセス|〒761-4425 香川県小豆郡小豆島町坂手甲1017
     Google Map

開館スケジュール
開館時間|10:00 – 17:00 (火曜日閉館・8/16を除く)
秋会期|9/29 – 11/6(※ 春夏会期は既に終了)

詳細は、新建築+砂木 小豆島ハウスプロジェクト、および瀬戸内芸術祭2022公式HPにてご確認ください。また小豆島ハウスの建築作品情報は、新建築データ掲載記事からもご覧いただけます。