ME310/SUGAR – グローバル イノベーション プログラムME310/SUGAR – Global Innovation Program

ME310/SUGARとは、京都工芸繊維大学の学生と研究者が海外の名門大学と共にグローバル企業から課されたイノベーションの課題に取り組むプログラムである。

スタンフォード大学 機械工学部にデザイン思考のアプローチを持ち込んだ授業から始まったME310/SUGAR

ME310は、企業と協同し、実社会さながらの体験をするためのプロジェクトベースのコースとして、1969年にスタンフォード大学の機械工学科にて設立された。当初は工学に関するプロジェクトが主であったが、産業のニーズの変化に伴い、プロジェクトの焦点も変化した。プロダクトのあり方が多様化し、ソフトウェアが我々の日常生活においてより身近になるにつれ、純粋に機械工学的だったプロジェクトはより学際的なものになった。過去10年間においては、インターネットがプロダクトとサービスと人を繋ぐようになったことで、プロジェクトのトピックはプロダクトからシステムへと変化した。さらに、急速に加速する世界において企業がイノベーションの困難さに直面している現状を反映し、トピックはオープンエンドなものになった。

2000年代半ばに、グローバル化した世界に応じて、スタンフォード大学はプロジェクトの参加学生を多様化するために海外の大学と協同し始めた。いくつかの実験的プロジェクトでは、2つの大学の生徒たちが9ヶ月間のコラボレーションをするというものがあった。成長に伴う苦しみはあったものの、結果的にプロジェクトの成果物の質は高まりこれらの実験は成功に終わった。数年後には、全てのプロジェクトが2カ国の大学の生徒が参加するものとなった。さらに、パートナー大学が新しい提携を結び国際的にネットワークを広げるにつれて、現在「デザイン思考」として知られるスタンフォードのイノベーションへのアプローチは世界に広められた。

世界20カ国以上の教育ネットワークに日本から唯一継続的に参加しているD-lab

SUGARネットワークは、スタンフォード大学とME310プロジェクトにて協同した大学によって2008年に設立された。今や五大陸にまたがる20以上もの大学が参加するネットワークへと成長した。例年のキックオフワークショップや、世界中から革新的なアイディアやプロトタイプが集まるシリコンバレーでの最終展覧会には、300人以上の学生や教授が集まる。
京都工芸繊維大学は2009年にアールト大学を通じて初めてネットワークに参加し、フィンランドのKemppiという会社と共にプロジェクトに取り組んだ。数年間のアールトとの協同を経て、KYOTO Design Labの設立とともに国際的プロジェクトをこなすためのリソースが増えたことでプログラムは拡大した。京都工芸繊維大学は2015年から様々な大学や企業と共に複数のプロジェクトに取り組んでおり、今もなお、ネットワーク内で精力的に活動する日本で唯一の大学である。

世界各国の提携大学と提携企業のネットワーク図

デザイン思考によるイノベーションの方法論

革新的なプロダクトやシステムを作るためのME310/SUGARのアプローチは何十年もの間スタンフォード大学で開発され、デザイン思考として知られるようになった。デザイン思考の核となる要素は3つある。

-人間のニーズとコンテクストの深い理解
-ラピッドプロトタイピング、実験、反復
-チームから最良の結果を引き出すイノベーションカルチャー

企画とその慎重な遂行を重視する従来の製品開発モデルとは違い、ME310/SUGARは、イノベーションとは機敏な思考を必要とする曖昧さを伴うものだと理解している。プログラムでは様々なプロトタイピングの主要な節目を設定し、デザイン思考の熟練者になるための指針としている。

長年の経験を通して、京都工芸繊維大学はデザイン思考を日本のコンテクストとカリキュラムに統合することに成功した。学生からなるチームは、海外の学生とより良いコラボレーションをすすめるために、教員とKYOTO Design Labコミュニティの両方からサポートを得ることができる。

SUGAR NETWORKによるデザインによるイノベーション開発の概念図

これまでのプロジェクト

下記のプロジェクトは、今まで京都工芸繊維大学にて海外のパートナーと共に取り組んだプロジェクトの例である。

Tabito(凸版印刷株式会社✕スタンフォード大学)
凸版プロジェクトは、共通言語を持たない人々の間での「言語なしのコミュニケーション」という曖昧(多義的、抽象的)なテーマから出発した。このプロジェクトは、日本における海外からの旅行者が劇的に増加していて、2020年の東京オリンピックまで増加し続けるであろうという事実を受けてのものである。

チームは、ガイドブックやTripAdvisorなどの人気のウェブサイトに従わない旅行者をターゲットとした。観光の人気が高まるにつれ、このような旅行者向けの情報ソースがいわゆる観光地的な場所を作り出しているなかで、よりローカルな体験を求める人も一定数いる。しかし、英語を上手く話せない人の多い国において、おすすめの場所を訊ねるのは困難でもある。チームはこういった意思疎通に着目し、Tabitoのコンセプトとプロトタイプを作り上げた。

Tabitoとは、旅行者が現地の人とコミュニケーションをとるための、E ink(電子ペーパー)とマップをベースとしたコミュニケーションデバイスである。E ink(電子ペーパー)によってデバイスは屋外で簡単に使えるようになり、マップによって現地の人々のおすすめを簡単に知ることができるというものである。最終的なコンセプトは、E ink(電子ペーパー)の有効性を示すための機能的なE ink(電子ペーパー)スクリーン、ソフトウェアの全ての機能を実証するためのタブレット用アプリケーション、そして巻くことのできるディスプレイが将来的に流通した場合の応用法を示すモックアップ、という三種のプロトタイプに落としこまれた。

マップデバイスのプロトタイプ

XS310(ヤンマーホールディングス株式会社✕スウィンバーン大学、デザインファクトリー・メルボルン)
ヤンマーは、農業機械や農業施設をはじめとする多様な製品を開発する、100年以上の歴史を持つ日本の製造企業である。ヤンマーから学生へ与えられた課題は「ブドウ園のためのイノベーション」というもので、解決すべき特定の問題を学生が探すという様式に基づき、このトピックが設定された。

このプロジェクトの期間中、農家の方へのインタビューやプロトタイプの作成とテストを通して、チームはブドウの栽培に関するあらゆる側面を調査した。ここで生まれたアイディアは、簡単なブドウ収穫の方法に関するものから平らでない地面に耐えうるトラクターのデザインに関するものまで、多岐に及んだ。最終的には、健康と環境両方の面で懸念されている農薬散布の問題に焦点を絞ることとなった。

昨今のブドウ園での農薬散布は、大量の農薬を空気中に放つことでブドウ園全体に行き渡っていることを願うという「散布して祈る」アプローチをとる。しかし、農薬の大半は吹き流され漂流するため、地面が害のある汚染物質と化してしまう。そこで、チームはこの無駄な漂流をなくすためにXS-310システムを開発した。従来の農薬噴霧器とは違い、XS-310はブドウ園を覆うことでブドウに付着しなかった農薬を後に使用できるようにリサイクルする。このことにより漂流は98%も減少した。XS-310システムは、二つの農薬散布ユニットを搭載した、トラクターに牽引されるモジュールである。チームは、全体のシステムにおける重要な構成要素である農薬散布ユニットのプロトタイプを作成し、実現可能性を実証した。また、農家の方が農薬の消費状況を簡単にトラッキングでき、農園での作業中に不規則性を記録することもできる、Data Dogを補完するアプリケーションも開発した。

スタンフォード大学での実働するプロトタイプ展示風景

担当教員略歴

スシ・スズキ 特任准教授 KYOTO Design Lab
スシ・スズキはスタンフォード大学のME310プログラムの卒業生であり、BMWや2004年から2005年にかけてはミュンヘン工科大学にて勤めた。翌年、ME310プログラムのティーチング・アシスタントとして学生チームが革新的なコンセプトを練るための援助をしていた。2007年から2009年にかけて、スタンフォード大学のプログラムにてエグゼクティブ・ディレクターを務め、企業や他大学とのプロジェクトの調整に携わった。2009年にd.school Parisの設立を援助し、この教育法と哲学をフランスへ伝えた。2015年よりKYOTO Design Labに加入し、京都工芸繊維大学にてより国際的なプログラムに携わる。アカデミアでの経歴に加え、メルセデスベンツにてシステムエンジニアを務めたり、パナソニックにてコンセプト・デベロパーを務めたり、日本やドイツでスタートアップに携わった経験を持つ。

多田羅景太 助教 京都工芸繊維大学 デザイン・建築学系
多田羅景太は京都工芸繊維大学にて2010年よりME310/SUGARに関わっている。KYOTO Design Labが2014年に設立されてから、スシ・スズキと共に教員チームのメンバーとしてプログラムを支えてきた。特にインテリアプロダクトに重点を置いたプロダクトデザイナーとしてのバックグラウンドを持つ。

お問い合わせ

プロジェクトに関するお問い合わせ、産学連携のお問い合わせなどは、コンタクトページよりご連絡下さい。

ME310/SUGAR is a program where students and researchers from the Kyoto Institute of Technology work together with leading international universities to tackle innovation challenges posed by global corporations.

History about ME310

The ME310 program at Stanford University was founded in 1969 in the mechanical engineering department as a project-based course for students to work with corporations to gain real world experiences. Initially the projects were engineering oriented, but throughout the years, the focus has shifted as the needs of industries have changed. Pure mechanical engineering projects became more multidisciplinary as products became diversified and software became increasingly involved in our everyday lives. The last decade has seen project topics shift from products to systems as the internet enabled connections between products, services, and people. Topics have also become more open-ended reflecting the difficulty of innovation that corporations are facing in this rapidly accelerating world.

During the mid-2000s, in response to the globalized world, Stanford University started experimenting with foreign universities to diversify the students on the project. In some test projects, students from two different universities collaborated for the nine months of the projects. While early growing pains were experienced, the experiments proved to be a success as the quality of project results increased and in several years, all projects were undertaken by students from two different countries. Furthermore, the international expansion helped spread the Stanford approach to innovation, now known as “design thinking,” to spread globally as partner universities extended the network with new project partnerships.

The Kyoto Institute of Technology first joined the network with the help of Aalto University in 2009, conducting their first project with the Finnish company Kemppi. After several years of working with Aalto, the program grew with the establishment of the KYOTO Design Lab and increased resources to carryout international projects. Since 2015, the Kyoto Institute of Technology is conducting multiple projects with various universities and companies around the world.

SUGAR Network Map

International Network “SUGAR Network”

The SUGAR Network [[http://sugar-network.org/sugar/]] was established in 2008 by Stanford University and universities that have collaborated together on ME310 projects. Since its inception, the network has grown considerably and now included over 20 universities in 5 continents. The annual kickoff workshop brings together over 300 students and faculty, and the final exposition in Silicon Valley an incredible exhibition of innovative ideas and prototypes from around the world. Kyoto Institute of Technology is the only active Japanese university in Japan.

Diagram: design thinking innovation approach by SUGAR Network

The Design Thinking Approach

The ME310/SUGAR approach to creating innovative products and systems has been developed at Stanford University for several decades and has now become known as design thinking. At the heart of design thinking are three core elements:
– Deep understanding of human needs and context
– Rapid prototyping, experimentation, and iteration
– Innovative culture that brings the best out of teams
Unlike traditional product development models that focus heavily on planning and careful execution, ME310/SUGAR understands that innovation is full of ambiguity that requires agile thinking. The program incorporates various prototyping milestones to guide students as they become experts in design thinking.

Through many years of experience, the Kyoto Institute of Technology has successfully integrated design thinking into the Japanese context and curriculum. Students teams are given the support from both the faculty and the larger KYOTO Design Lab community in order to better collaborate with international students.

Past Projects

These are couple of the many past projects conducted at the Kyoto Institute of Technology with international partners.

Prototype of map device


Tabito
Toppan Printing Co.
Stanford University

The Toppan Project began with the ambiguous theme of “language-less communication” between those who do not share a common language. Underlying the project was the fact that international tourism in Japan is increasing drastically and is expected to continue until the 2020 Olympic in Tokyo.

The team targeted tourists who wanted to go beyond the guidebooks and popular websites such as TripAdvisor. With the increasing popularity of tourism, these sorts of tourist-oriented information sources are creating very “touristy” sites. There are people who want to go beyond that and strive for a more “local” experience. However in many countries where the locals do not speak English well, asking for recommendations is difficult. The team focused on this interaction and created their Tabito concept and prototype.

Tabito is a e-ink based map-based communication device that tourists can use to communicate with locals. E-ink allows the device to be easily used outside under the sun, and having a map allows the tourist to easy extract recommendations out of locals. The software on the device easily allows the tourist to plan his or her day, and easily adjust the schedule with recommendations from locals. The final concept was prototyped in three ways, a functional e-ink screen to demonstrate the benefits of e-ink, a tablet app to demonstrate the full functionalities of the software, and a physical mockup to show the future development when rollable e-ink screens become available.

Prototype exhibited in ME310/SUGAR EXPE at Stanford University


XS310
Yanmar Co., Ltd.
Design Factory Melbourne, Swinburne University

Yanmar is a 100+ year old Japanese manufacturing company that makes agricultural machinery and facilities (amongst many other products). Their challenge for the students was “innovation for vineyards” and the topic was framed in such a way that students were responsible for finding the specific problem to solve.

Throughout the project, the team investigated many different aspects of grape cultivation through interviewing farmers to developing and testing prototypes. Ideas ranged from easy ways of harvesting grapes to tractor designs that can withstand uneven terrain. In the end, the team focused on pesticide application, an area with both health an environmental concerns.

Pesticide application in current vineyards take the “spray and pray” approach, where vast quantities are ejected into the air in the hopes of covering all the vines. However, much of the pesticide “drifts,” ending up the ground becoming harmful pollutants. The team developed the XS-310 system to combat this wasteful drift. Unlike conventional pesticide sprayers, the XS-310 covers the vines so that whatever pesticide that doesn’t stick to the plants are recycled for later use. This helps reduce drift by up to 98%. The full XS-310 system will be a module that gets pulled behind the tractor with two pesticide application units. The team prototyped one pesticide application unit, the critical component of the entire system and demonstrated its feasibility. The team also developed the Data Dog compliment app that allows farmer to easily track pesticide usage and mark irregularities while working on the farm.

Kyoto Institute of Technology Teaching Team

Sushi Suzuki
Project Associate Professor
KYOTO Design Lab

Sushi is an alumnus of the ME310 program at Stanford University having worked with BMW and Technical University of Munich in 2004-2005. Year later, he was the teaching assistant for the program helping student teams develop innovative concepts. From 2007 to 2009, he was the executive director for the program at Stanford University, coordinating projects with companies and other universities. In 2009, he helped start what has now become d.school Paris and brought the pedagogy and Philosophy to France. Sushi joined the KYOTO Design Lab in 2015 to develop more international programs at the Kyoto Institute of Technology. In addition to working in academia, Sushi has worked at the Mercedes Benz as a systems engineer and Panasonic as a Concept Developer as well as being involved in startups in Germany and Japan.

Keita Tatara
Assistant Professor
Department of Design and Architecture
Kyoto Institute of Technology

Keita has been involved with ME310/SUGAR since 2010 at the Kyoto Institute of Technology. After the KYOTO Design Lab was established in 2014, he has been supporting the program with Sushi Suzuki as a member of teaching team. Keita has a background as a product designer, especially for interior products.

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